Art RingからLove Ringへ
4月19日からロンドンのジュエリーショップ “Tomfoolery” でスタートしたフェア「LOVE Ring」に参加しています。
今回は、そのイベントの内容や、そこに至るまでの経緯について書いてみたいと思います。

Tomfooleryとは?
まず、Tomfooleryとはどんなお店なのか。
お店のウェブサイトに掲載されているアバウトページの内容をChatGPTに翻訳してもらいました。
ロンドン・マスウェルヒルに佇むTomfooleryは、“ロンドンの隠れた名店”として知られています。世界中のデザイナーから厳選・キュレーションした、遊び心と控えめな美しさを兼ね備えたジュエリーを展開するコンテンポラリーなデザイナーズブティックです。
日常に寄り添いながら、長く愛されるジュエリーとの出会いを提供する場でもあり、コンテンポラリーからトラディショナル、ファインジュエリー、ビスポーク(オーダーメイド)まで、幅広いスタイルを紹介。20年以上の経験に基づくパーソナライズドなサービスにも定評があります。
明るく開放的なギャラリースペースでは、世界中のクリエイターのクラフツマンシップと探究心を反映した作品が展示されており、まさにジュエリーの“聖地”のような空間です。
1994年にニッキー&ピーター・ケイ夫妻が創業し、現在は娘のローラ・ケイがその想いを受け継いでいます。Hermèsでの経験や写真の感性を活かし、オンラインショップの立ち上げや新しいジュエリーラインの展開など、ブランドに新たな時代をもたらしています。

この記述の通り、Tomfooleryはロンドンのジュエリーシーンを牽引してきた、歴史と信頼のある素敵なお店です。
「Art Ring」展への参加
今回参加している「Love Ring」展につながったきっかけは、その前に開催された「Art Ring」展でした。
昨年8月末、Tomfooleryから「冬に開催しているArt Ring展に参加しませんか?」というご連絡をいただいたのが始まり。お店の存在は以前から知っていましたが、ロンドンで展示もしたことのなかったにも関わらずお声がけいただき、正直かなり驚きました。
Art Ringのリングには、以下のテーマが設定されていました。
Tomfooleryの30周年を記念し、「3つのストーンまたは素材」を使ったリングを制作すること。
素材やサイズに制限はなく、自由な発想でOK。
さらに、以下のような要素も求められていました:
- ストーリー性
- 精緻さ
- 大胆さ
- 芸術性
- 卓越した技巧
- あなたらしさ(OOAK=一点もの)
9月初旬に企画の連絡を受け、スケジュールが提示されました。スケッチ提出の締切は10月7日、商品提出は10月21日と設定され、実質デザインにかけられる時間は1週間ほどでした。しかもスケッチ、コンセプト、制作過程の動画の提出も求められました

そこでゼロから新しいデザインを考えるのではなく、以前紹介してきた「Position」シリーズをベースに、新たなアプローチでリングに仕立てることにしました。
これまではダイヤ1石で構成していたPositionリング。
今回はテーマに合わせて、マーキス・ラウンド・バゲットという異なる3つのダイヤモンドシェイプを組み合わせて構成しました。
実はこの構想は以前からあったのですが、実際に作ってみるとバランスを取るのが想像以上に難しく…。職人さんと一緒に何度も試作を重ねて、ようやく納得のいく仕上がりに。


完成したリングは、Tomfooleryの30年の歩みを象徴するような、記念碑的な一点になったと思っています。
しかも、このリングはブランド史上最も高額な価格設定だったにもかかわらず、イベント開始直後すぐにご成約いただくことができました。
サイズ感や雰囲気が、欧米のお客様にフィットしたのかもしれません。
「LOVE Ring」展
Art Ringでの反応がよかったからか、その流れで「LOVE Ring」展へのお誘いもいただきました。
Tomfooleryでは、年に2回こうした展示が行われており、「LOVE Ring」はそのうちの一つ。テーマは「自分たちらしさを大切にしたい新郎新婦のためのジュエリーデスティネーション」です。
提出が求められたアイテムは以下の通り:
- エンゲージメントリング:3〜6点
- ウェディングバンド(結婚指輪):2点
- エタニティリング:1点
- ピアス(スタッドまたはドロップ):1ペア
- ネックレス:1点
- ブレスレット:1点
「ピアスやブレスレットってウェディングジュエリーに入るの?」と少し戸惑いもありましたが、ロンドンでリング以外のコレクションも紹介できるチャンスと前向きにとらえて、すべてのアイテムを用意することにしました。
制作期間は2ヶ月以上あったので、年始のIJK(国際宝飾展)で仕入れた珍しいフランダースカットのダイヤを使って、新作のエンゲージメントリングを作ろうと意気込んでいたのですが…ギリギリに仕上がった試作品は、残念ながら納得のいくデザインに仕上がらず、今回は提出を見送りました。

代わりに、今回は既にあるデザインの中から選んで構成することに。「Views」、「V ring」、「Chain ring」をはじめ、「Position」や「Dent」など、最終的に計22アイテムに及びました。現在公式サイトでも公開されています。このフランダースカットのリングは、もう少しブラッシュアップして、あらためて発表したいと思っています。
最後に
現在開催中の「Love Ring」展。
本当はロンドンまで行って展示の様子をこの目で見たかったのですが、今回はスケジュールの都合で折り合いがつかず。次の機会があれば、ロンドンはもちろんのこと、ヨーロッパの母校や他の取引先を巡ったり、現地の空気をもっとじっくり感じられたらいいなと思っています。
海外の展示に参加するたびに感じるのは、ジュエリーの好みや価値観って本当に国によって違うということ。もちろん、現地の感覚に合わせることも大事だけど、自分らしさやブランドの軸はしっかり持っていたい。そんなバランスを考えながら、これからも海外に向けて発信していけたらと思っています。
これからもjanukaは、素材や構造の面白さを大切にしながら、もっといろんな国の人たちにも作品を届けていきたいと思っています。